なましろくんと納屋の風景

「人と本との繋がりはとても深いもの」とつくづく思うのは、私がまだ小児科に配属されていたときの出会いに関係があります。

重い気管支喘息を患っているその男の子は、度々重篤化しては、同じ病棟に入退院を繰り返していました。 元々明るい性格で、病態が安定しているときは、年相応の子どもっぽさを見せてくれましたが、ひとたび咳が止まらなくなると長引き、そのまま悪化することもあったので、「なるべくベッドで安静にしていてほしい」と悩んでいました。 いつも病的に青白い顔色を比喩し、「早く治さないとダメだよ」という意味合いも込め「なましろくん」と呼んだこともあります。
ある日、「少しでもベッド上でも暇を潰せれば」と思い、私は本をプレゼントしました。「将来食肉として殺されてしまうことを知った主人公の仔豚と友達になった一匹の牝蜘蛛が仔豚の身を案じ、人間に殺されない方法を考える」という有名な児童書籍の「シャーロットのおくりもの」です。
それからというもの、「豚や鶏が同じように殺されると知ってしまったら人間から逃げたくなるのに、どうして仔豚は、殺されることを知ってしまったのだろう」という疑問を男の子は抱くようになりました。 そして、「とても純粋だな」と感心しました。
私たちは、生きていた豚、牛、鶏や魚を肉、卵や魚などとして普段当たり前のように食べていますが、無意識に忘れがちです。 まだ幼い身でありながら男の子は、殺される運命の元に生まれた仔豚と、病弱な自分とを重ねていたのかもしれません。 「少しかわいそうなことをしたかな」と悩みましたが、お母さんからはむしろ「有り難い」というお言葉を頂きました。 本をプレゼントしてから、男の子は自主的にベッドで養生するようになり、やんちゃだった顔つきから何か達観したような顔つきになり、しっかりと治療に専念するようになりました。 子どもの幼心を殺してしまった、ある意味で残酷な、それでも必要な試練だったのかもしれません。 半年ほど入退院を繰り返した後、定期受診を除き、病棟に戻るようなことはなくなり、寂しかったですが、とても嬉しくもありました。

 「人と本との繋がりは何だろう」と考えるとき、この男の子のことを思い出しますが、「共鳴できる何か」とめぐり会うことは、とても素晴らしいことです。引越し 見積もり